回想録

里子に出すのは酷いことですか?

望まぬ妊娠

今回も、性的な表現と言葉が含まれていますので、苦手な方はスルーしてください。

妊娠は自己責任とおっしゃる方がいます。

里子に出すなんて可哀想だ、
自分でちゃんと育てるべきだ、
と、おっしゃる方がいます。

けれど、私は、
妊娠の全てが自己責任だとは思いません。

私はお付き合いしていた方から、
暴行されて妊娠しました。

機能不全家族の中で虐待を受けて、
家庭の愛情など、
与えてあげらるとは思えないから、
子供だけは作らないで欲しい、
と訴えていた相手から、
ただ、自分から逃げない為に、
子供をつくる行為を、
無理矢理されました。

もしかしたら、
妊娠は自己責任だという人は、
そんな男と付き合っていた私が悪いと、
言うのかもしれません。

けれど、就職活動中に体を悪くし、
とても働ける状態では無かったけれど、
母から

「働きたくないから仮病を使ってるんだろう」

と病気であることを疑われ、
穀潰しのように扱われ、
実家を追い出されようとしていた、
18歳の私には、
元准看護師で医療の知識のある彼が、
私の病気が良くなるように面倒をみてくれて、
住むところが無かったら、
一緒に住もうと申し出てくれたことが、
路頭に迷っていた私に唯一差し出された、
生きていくための救いの手でした。

その手を掴んだことを非難されるのなら、
私には返す言葉はありません。

そんな彼との、
色んな理由があって出来た子供でしたが、
子供の命を消してしまうことが、
出来なかった私は、
彼とこの子供と、
幸せな家庭を作ろうと想っていました。

けれど、彼が愛人を家に連れてきたことで、
その想いが叶うことはありませんでした。

その後、私は自殺未遂をしました。

彼は自分の子供の面倒を見ることはなく、
親に愛されない子供が、
どんなに辛いか知っていた私は、
子供を1人残していくことが出来ず、
子供と一緒に死のうとしました。

幸いなことに、2人とも助かったのですが。

その時に、もう自分1人で、
この子を育てていくことは出来ないと思い、

「この子を里子に出そうと思う」

と自分の母親に告げると、
母親は子供を抱っこしてイヤイヤとしました。

「お母さんはこの子を手放すなんて嫌よ!」

その姿を見て、この子は、
母親(子供から見たらおばあちゃん)に、
愛されているのだと、
不思議な気持ちになりました。

それは、私が得られなかったものでした。

私は母親に、
愛されることは出来なかったけれど、
自分の子供は、
愛してもらえていると思った時に、
私は何とか、
子供を里子に出すことを思い留まり、
だからといってあんな環境の実家に、
帰る選択肢は無かったため、
私はその後、
かなり心身共に辛い生活を、
強いられることになりました。

彼とは数ヶ月後に離婚したのですが、
その当時、専業主婦で貯金も無かった私は、
生活していくためには、
彼からお金をもらうしかありませんでした。

私の生活のためにお金はださなくても、
子供を育てるためのお金は、
出してくれるだろうと思っていた私は、
彼から言われた言葉に凍りつきました。

「坊主憎けりゃ袈裟まで憎いって知ってるか?
お前のことが好きでもないのに、お前の子供に金を出す訳ないだろう」

「金(養育費)が欲しかったら、俺に気に入られるような女になれ」

「股を広げてヤラせろ」

人は、人に対して、
こんなに酷いことを言えるのかと思いました。

けれど実家に頼れなかった私は、
彼の言う通りにするしかありませんでした。

私の母は子供を手放すことには反対しましたが、
家にお金が無いという理由で、経済的援助は出来ないと言われていました。

ことが終わると彼は、
財布から数枚のお札を取り出して床に投げ、

「拾え」

と、笑いながら私に言いました。

私は屈辱に震えながら、床に散らばったお金を、
拾い集めるしかありませんでした。

人間の尊厳など、無い生活でした。

行政機関にも相談に行きましたが、
色んな理由から、
生活保護も認められなかった私は、
そこまでしないと、
生きていくことが出来ませんでした。

そんな底辺ギリギリの生活をしていた私は、
望まぬ妊娠をして、
子供を里子にだす妊婦の方々の気持ちが、
とてもよく分かります。

決して自分勝手に、
産み捨てている人だけではないのです。

子供が母親から愛されて、
幸せな家庭で育つことがもちろん理想です。

でも、それが望めない場合、
母親が自分で子供を育てることは出来なくても、
子供の命が守られたことに、
目を向けてもいいのではないでしょうか?