社会との関わり方

人間関係のテクニックを使うことで自分を嫌う相手との関係をどれくらい改善できたか?

一つの職場で長く働いている女性事務員は、
経験と年齢を重ねていくと、
仕事に対する自信がつくせいか、
態度も自尊心も肥大化しすぎてしまう傾向が、
私の勤める会社ではよく見られます。

その為、新しく転勤してきた上司が、
今までと違う仕事のやり方を指導すると、
そのやり方の是非を考える事なく、
ただただ

「今までの慣れたやり方と違う事はしたくない!!」

という理由だけで反発し、
上司の指導する仕事のやり方を受け入れず、
感情的に上司に敵対するという行為を、
職場で行っても平気な人間に、
なってしまいます。

なぜなら、そこの営業所のなかでは
2~3年で転勤していく総合職の上司達より、
ずっとそこの営業所で働き続ける、
自分達の方が、
人脈もあり立場が強いという自負が、
彼女達の中にあるからです。

その態度はまるで、営業所の女王様。
自分に逆らう者には容赦しない、
といった呈です。

私をずっと無視していたお局部下も、
そんな女性事務員の1人でした。

私は彼女の直属の上司として、
昨年4月に今の営業所に転勤してきましたが、
彼女の仕事のやり方が、
会社の指導と異なっており、
会社の規定から外れている事が多かったため、
会社の規定通りのやり方をするよう、
彼女を指導しました。

するとそれが仕事に自信を持っていた、
彼女のプライドを、
いたく傷つけてしまったようで、
彼女はその報復のように、
職場で決めたカップ洗い当番の時に、
私のカップだけは絶対に洗わない
という行動を起こし、
仕事の事で、
上司である私が彼女に話しかけても、
5月から8月の間は、
私の事をずっと無視し続けるという、
社会人としてあるまじき態度を、
取り続けました。

私が発達障害のカウンセリングを、
受けようと思いつめたのも、
彼女から受けた、
そんな嫌がらせが原因でした。

彼女のような、機嫌を取らなければ、
上手く付き合えない人間と、
とことん相性が悪く、
必ずそんな人間と揉めてしまう私は、
自分の人間性に、
何か問題があるのではないかと疑い、
発達障害専門カウンセリングを受け、
心理セラピーに通い、

「どうして私は、彼女のような人間と揉めてしまうのか」

という命題に、必死に向き合ったのでした。

そして、その結果私が得た解答は、

「人間には付き合う時にテクニックが必要な類の人間がいる」

という事でした。

それは、私にとって、
コペルニクス的思考の転回でした。

それまでずっと私は、
人に対しては、
誠実に対応することが良いことで、
心ではなく技術で人に相対することなど、
相手に対して失礼だと思っていました。

でも発達障害専門カウンセリングで、
本音で生きている人の方が少ない
と教わった私は、
心の籠らない技術だけで、
人に接するのは抵抗があったけれど、
とにかく今まで、
自分で考えたやり方でやってきて、
それで上手くいかなかったのだから、
騙されたと思って、
カウンセラーさんの言うとおり、
やってみようと、
心の籠らないクッション言葉を、
お局部下に使い続けてみました。

そしてこれが、功を奏したのです。

お局部下の態度はどんどん軟化し、
私に対して話す時の威圧感がなくなり、
とうとう先日は私に、
自分からこんなことを話しかけてくれました。

「係長、椎茸は好きですか?」

その質問に私が、

「はい、椎茸は好きですよ」

と答えたことろ、なんと彼女が

「親戚から椎茸貰ったんですけど要りますか?」

と聞いてきてくれたのです!!

私は本当に椎茸が好きだったこともあって、
とても有難く、
喜んで彼女から椎茸を貰いました。

「ありがとう、嬉しい!!」

そう言った私の言葉は、
本当に心の底から真実でした。
それはただ単に、
好きなモノを貰えたからだけ、
ではありませんでした。

彼女と友好関係を築きかけていることが、
実感できて、
とても嬉しかったのです。

クッション言葉を彼女に使い始めた時には、
本当に心の籠らない、形だけのものでした。

でも、彼女との関係が、
少しずつ改善されるにつれて、
私の形だけの言葉には、
少しずつ本当の心が、
こもるようになりました。

それは彼女との関係が改善されるにつれて、
彼女に対する私の心象が

「嫌なひと」

から

「嫌なところもある人」

に変わったからでした。

人と接する技術を先に使ったことで、
相手に対して心を込められることがある。

この出来事は私に、

「自分の心に誠実に相手に接することが最善ではない」

ということを、実感させてくれました。