発達障害(ASD)グレーゾーン

発達障害グレーゾーンの性質が評価を受けた日

職場で見せる私の仕事の細かさは、
時として大きな厄介事を招きます。

他の人が見過ごしてしまうことに
私は気が付いてしまうのです。

それは私が発達障害グレーゾーンである事が、
大いに関係していると思われます。

なぜと言われても分らないのですが、
何かおかしかったり、
分らないことがあると、
私はその内容を、
きちんと確認せずにはいられないのです。

そして今日、
私は3日間ほどの時間をかけて、
ずっと気になっていた会社の資産と、
課税対象として報告してある資産の照合を終え、
私の勤務している営業所の資産が、
もう15年以上、
市役所に間違って申告されていることを、
確認しました。

故意ではないにしろ申告が誤っていたら、
市役所が会社に課税する税金が変わります。

そして私が見つけた誤りは、
税金を追徴される内容のものでした。

会社としては、
あまり嬉しくない間違いの発見です。

でも私は、
自分が担当している業務である以上、
正しく申告しなければいけないと思い、
上司に報告しました。

私は昨年4月に転勤してきましたが、
上司は2年前から、
この営業所で勤務しています。

昨年までの申告が、
間違っていると上司に伝えることは、
今までの、
上司の業務チェックが間違っていると、
上司に伝えるのも同じことでした。

私はこうやって人のミスをよくみつけるため、
様々な上司から嫌がられてきました。

大抵の上司は、
自分の任期の間はつつがなく過ごしたいため、
自分の代で大きな間違いなど、
見つけて欲しくは無いのです。

でも発達障害グレーゾーンである私は、
やらなければいけないと、
決まっている事に対して、
見ないふりをすることが出来ません。

嫌がられるのを覚悟して、
上司である課長に話をすると、
いつもは朗らかなはずの課長は、
眉間にしわを寄せて、
無言で私の話を聞いていました。


私の話を聞き終わった課長は、

「分りました。
過去の過ちを問うてもしょうがないので、
今から正しい手続きをしてください」

と言われました。

普段はお喋りな課長の低い声での物言いに、

「また面倒な奴と思われた、、、」

と、間違いを指摘したことに、
後悔は無いながらも、
物悲しい気持ちになりました。

私は決して、人様の間違いを見つけて
喜んでいる訳ではないのです。

他の人のように、
間違いに気づくことなく過ごせれば
どんなに良いだろうと思うのですが、
発達障害グレーゾーンの性質が、
間違いを見つけてしまうのです。

「こんな面倒なことを、
話してしまってすみません」

すっかり寡黙になってしまった課長に、
私は俯いたまま謝りました。

実は私は、この課長に話をする前に
課長の次に偉い上司である課長補佐にも、
話をしていました。

課長補佐は最初、

「今までそれで通ってきたんだから
そのままにしていていいんじゃないの」

と言っていました。

でも私は、
虚偽の申告書を作成するのが嫌で、
課長補佐と何度も議論し、
最終判断を課長に求める事になったのでした。

課長補佐からすれば、
面倒事をあえて引き起こした
厄介な人間に写ったに違いありません。

課長もきっと、
そんな気持ちなのだろうと思い
謝罪したのですが、
課長から返ってきたのは全く別な言葉でした。

「いや、間違いに気づいたことはむしろ
評価に値する」

私はその言葉を聞いて、
驚きのあまり顔を上げて、
目を見開いたまま、
課長の顔を凝視してしまいました。

それは、私の、
発達障害グレーゾーンの性質に対する、
今までとは正反対の言葉でした。

色んな人から、
色んな場面で嫌がられてきた、
私の細かいことに気付いてしまう性質。

私が細かいことに気付いてしまうせいで、
周りは仕事が増え、
いつも迷惑がられていました。

「なんでそんなに波風を立てるの」

そんな風に言われたこともありました。

そして、
そんな言葉を浴びせられるたびに、
私は自分の気持ちは、
他人に理解されないのだと、
いつも打ちひしがれてきたのです。

決まっていることを決まった通りにやりたい

ただ、それだけのことを実行することが、
会社という組織は、
何て大変なのだろうかと思います。

そして、そのようなことが起こるたびに、
私は社会で生きていく難しさを、
感じてしまうのです。

でも今日は、そんな私の性質を、

「評価に値する」

と言ってもらうことが出来たのです。

まさに青天の霹靂です。

ずっと、
社会で生きていくには難しいと思っていた
発達障害グレーゾーンの性質。

しかしそれは、決して、
引け目を感じるだけのものではないのだと、
場合によっては、
誇っていい性質でもあるのだと、
そう人から教えてもらった、
初めての日でした。