私は普段、
優しい心穏やかな人間として、
職場で働いていますが、
本当は感情の起伏の激しい人間です。
私が職場で心穏やかに振舞っているのは、
会社員歴22年の間に学んだ、
「その方が自分にとって利益になるから」
という、
利害による学習の結果によるものです。
ASD(自閉スペクトラム症)である私は、
入社したての頃は、
自分が社会で、
人とぶつかり易い性質だということにも、
気づいておらず、
なぜ正しいことを言っている自分が、
周囲の人間から煙たがられるのかを、
理解することが出来ませんでした。
以前、私を買ってくれている会社の先輩から、
「あなたの言うことは正しいけれど、
正論過ぎて相手の逃げ場がなくなる」
という注意を受けて、
ようやく一般的な人は、
決められたことを、
決められた通りに行うことに、
苦痛を感じることがあることに気づいたほど、
周囲と自分の、
物事の受け止め方の差があることに、
気がついていませんでした。
ASDの私にとって"やらなければいけないことをやる"ことは、当たり前のことだったため、
定型発達者のやらなければいけないことは分かっているけれど、"やりたくないからやらない"という考え方を、
理解するのはとても難しいものでした。
考え方の相違と、
融通の効かないASDの性質から、
期せずして、
人とぶつかって生きてきた私ですが、
人とぶつからない生き方をする方が、
会社では生きやすいというのを、
頭で理解することは出来なかったものの、
実体験として学んだ私は、
それ以来、自分の中の細かいこだわりは、
自分だけに関わりがある仕事か、
プライベートな時にだけ発揮するように、
気をつけて暮らしていました。
他の人は私の仕事の細かさについてこれない、又は理解出来ないため。
自分の特性を人に押し付けることは、
相手の領分を侵すことになる。
という考えが私にはあり、
例え自分の思考態度が、
一般的なものと違っていたとしても、
自己を尊重してもらいたい私は、
例え自分に理解出来なかったとしても、
理解出来ない相手のことも尊重することで、
自分の中の世界を守ろうと考えていました。
けれど、ここ最近、
私のこの態度では対応出来ない人間が、
私の周囲に現れました。
4月に転勤してきた部下Aです。
彼女は4月に初めて主任という管理職になり、
勝手が分かっていなかったため、
その仕事を5年間したことがある私が、
色々教えてあげていたのですが、
私は彼女の自由裁量を侵さないように、
いつも気遣っていました。
そのため、やり方が、
法律や規則で決まっている時は別ですが、
そうでない場合には、
「これはあくまで私のやり方であって、
Aさんのやり易いやり方で、
やっていいんですよ」
という言葉を、
必ず付け加えていました。
なるべく彼女の仕事に口を出すことは、
控えていましたが、
仕事には大抵期限があるため、
その期限を超えそうなものに関しては、
私は時々、彼女に対して、
「あと◯日で期限ですけど、
あの仕事はどうなっていますか?」
と訪ねると、
彼女は大抵私に対して、
「さぁ、知りません」
「報告がないから、分かりません」
といった返事を返してきました。
職場では、
課長>係長(私)>主任(部下A)>係
という序列なのですが、
彼女は自分の部下である係に仕事を任せて、
ただ報告を待っている、
という働き方だったため、
私の質問に答えられなかったのでした。
そんな彼女に対して私が、
「進んでいないんだったら、◯◯して、
◯◯しないと間に合わないですよね」
というと、
「そのやり方を教わってませんでした」
と言ってくるため、
私は本当にイライラしていました。
彼女がやり方を教わっていない、
というやり方は、
彼女が係任せにしていて進んでいない仕事を、
期限に間に合わせるにはどうしたらいいか、
私が自分で考えたものであり、
絶対にそうしなければいけない、
というものではなかったからです。
「これは私が考えたやり方で、
こうしなければいけない、
ということではありません。
だから、やり方は、
あなたが他にやり易いやり方があるなら、
それでやっていいんです。
最終的に、求めている結果が得られれば、
いいんですから」
そう言うと彼女は大抵、
フッと冷めた笑いと共に、
「やり易いやり方が分かりません」
と言ってきました。
このやり取りは、
何回か私と彼女の間で繰り返されており、
先週の金曜日も同じやり取りをして、
私は彼女の無責任な態度に、
目に涙が滲むほど腹が立ったのですが、
このやり取りからしばらくして私は、
どうしてこんなに、
彼女に対して腹が立つのかを、
改めて考えてみました。
その結果、
この2点が私のイラつく原因なのだ、
と分かりました。
- 自分で仕事のやり方を考えず、私が言った通りにやったスタンスを取ることで、私に責任を押し付け自分の責任を回避する、無責任な行動。
- 自分が責任を持たなければいけない仕事でも、「教わっていないから分からない」という開き直った態度。(本来、教えてもらう仕事ではなく、自分で考えて行う仕事)
結局、どちらも、
彼女がやらなければいけない仕事を、
彼女がやらないがために、
私が彼女の上司として、
尻拭いしてまわることになり、
私に対して多大な迷惑がかかっているため、
こんなに腹が立つのだと思いました。
ここでも登場した、
定型発達者の、
「やらなければいけないことは、
分かっているけれど、
やりたくないからやらない」
という無責任な態度。
やらなければいけないことが、
出来ていないことが、
ストレスになるASDの私には、
到底マネ出来ない芸当です。
これは自分の性質に絡んでいるため、
どちらが先に仕事に手を出してしまうか、
のガマン比べは、
私が圧倒的に負けてしまいます。
この困った定型発達者に対しては、
今までとは違う、
新たな対応策が必要になりそうです。
自分が彼女のいる職場で、
心地よく過ごすための方法を、
これから考えていこうと思います。
全ての定型発達者が私の部下Aと同じ言動を取るわけでも、
全てのASDが私と同じ性質を持っている訳でもなく、
あくまで私自身の体験で一例であることを、ご理解ください。