社会との関わり方

仕事を押し付けてくる相手には正面から立ち向かわない

発達障害グレーゾーンの性質の為か、
私は人の言葉の裏を読むのが、
得意ではありません。

だから4月に転勤してきた新しい課長補佐が、
実は働かない人だと気付くまで、
3か月程の時間を要してしまいました。

そして、その3か月の中で、
私が課長補佐から、
当然のように任された仕事が、
実は課長補佐がやるべき仕事だった事を、
後から課長に聞かされて、
非常に不愉快な思いをしました。

人の言葉を信じやすく、
言葉の裏など考えない、
発達障害グレーゾーンの私は、
往々にして小賢しい人間達から、
いいように使われてしまいます。

あんなに親切そうな顔で私に接しながら、
裏では自分の仕事を、
私に押し付けていたかと思うと、
それはとても恐ろしい所業のように思えて、
私は課長補佐の人間性が信用できず、
とても嫌悪するようになっていきました。

ただ、人を無視するような態度を取るのは、
嫌だった為、
課長補佐から話しかけられたら、
返事はしていましたが、
自分から課長補佐に話しかけるような事は、
しなくなっていました。

そんな中。

課長補佐の人間性が、
分らなかった3か月の間に、
課長補佐から私が押し付けられていた、
課長補佐の仕事が、
一からやり直さなければいけなくなった為、
私は課長の目の前で、
課長補佐にその仕事をお返ししました。

「最初からやり直しになったので、
手続きのやり直しをお願いします」

私がそう言って書類一式を渡すと、
一端は課長補佐は、
その仕事の書類を受け取ったものの、
その流れを見届けた課長がその場を離れると、

「来週やるから返しておくわ」

と言って、私に書類一式を投げ返しました。

私はその態度に非常に腹が立ちました。

私が騙されて引き受けてしまったとはいえ、
その仕事は元々、
課長補佐の仕事だったのです。

私に返しておく、
という言葉自体が間違っています。

しかも、課長のいる前では、
一端受け取るという姑息さが、
私の怒りに拍車をかけました。

私の手は、
返された書類を持ったまま怒りに震え、
目の前は真っ赤になりました。

課長補佐に言われた通り、
来週まで課長補佐の書類を預かるなど、
真っ平御免でした。

それでも今までの私なら、
嫌悪していても、
一応職場の上司である彼の言葉に従い、
じっと怒りを抱えて我慢するか、
我慢が限界に達していた場合には、

「これは本来、課長補佐の仕事なのだから、
ちゃんと自分でやってください」

と自分の正しさを主張して、
喧嘩腰に、
課長補佐に書類を突き返すところでしたが、
職場で人と揉めると仕事がやり難くなる事は、
お局部下で体験済みだった私は、

自分に我慢を強いることなく、
角を立てずに課長補佐に円満に書類を返す方法

を模索し始めました。

すると、いい考えが閃いたのです。

課長補佐の机の隣には、
課長補佐の点検を受ける書類を置く、
スペースがあります。

私は何食わぬ顔をして、
課長補佐から返された書類を、
他の書類と一緒に、
そのスペースに置きました。

課長補佐は、
そこに置かれていた書類を点検していく中で、
私に返したその書類を見つけると、
よっぽどその仕事を自分でやるのが嫌なのか、
もう一度私の方へ返そうとしてきました。

私はすかさずそこで、
課長補佐へ、
満面の笑みを浮かべてこういいました。

「課長補佐のご都合の良い時に、
その仕事が出来るよう、
そこに置いておきますので、
お好きな時に手を付けてくださいね」

私のその笑顔には、
断固とした拒否が含まれていましたが、
言葉はあくまでも、
課長補佐を思ってのような言葉を使いました。

私の、
親切で言っているかのような言葉のせいか、
本当は自分の仕事を、
私へ押し付けている事への後ろめたさからか、
課長補佐がそれ以上、
私にその書類を渡そうとしてくることは、
ありませんでした。

私は自分が勝利したような誇らしさで、
胸がすっとして清々しい気持ちで一杯でした。

この感じは、今までの私の、

「自分が我慢するか、相手と闘うか」

といった、二者択一の思考では、
体験出来なかったものでした。

発達障害グレーゾーンの思考は狭く、
よくこういった二者択一に陥りがちですが、
自分の視野の狭さを理解し、
広くする訓練をしていく事で、
もっと違う、もっとラクな解決法も、
見つけられるのだと分りました。