社会との関わり方

相手の意見を受け入れる態度を取るだけで物事は進みやすくなる

私の勤務する営業所の課長補佐が、
数週間程前から私には何も言わずに、
私の部下に何か指示をして、
コソコソと何か画策していた事に、
私は気付いていました。

けれど、
私には何の話もなかったので、
気にせずに放っておいたところ、
ある取引業者から相談を受けました。

それは、うちで取り扱っている商品の中に、

「品質が劣化する恐れがあるので、
陳列はご遠慮いただきたい」

と卸元から言われている、
取扱いが難しい商品があるのですが、
課長補佐はその忠告を無視して、
私に相談してきた取引業者に、
陳列するショーケースを勝手に発注していて、
その商品が、
陳列してはいけない事を知っている、
その取引業者の方は悩んだ末、
私に相談してきてくれたのでした。

その話を聞いた時、
私は慌てて、どういう経緯になっているのか、
課長補佐に確認しました。

すると、課長補佐は、

「卸元は、陳列はご遠慮いただきたい、
と言っているだけで、
陳列するなとは言われていないから大丈夫」

という、
なんとも手前勝手な理屈を並べ立てました。

どうやら、
課長補佐と仲の良い人達が、
課長補佐にその商品の陳列を依頼したらしく、
人にいい顔をしたい課長補佐は、
その依頼を安請け合いして、
今回の所業に踏み切ったようでした。

そのような事をしたら、
下手したら卸元を怒らせて、
商品を取り扱えなくなる事態も発生する為、
私は課長補佐に対して、
それがしてはいけない事だという事を、
こんこんと説明したのですが、
見栄っ張りの課長補佐は、
仲の良い人達に、
安請け合いをしてしまった手前、
自分の行為が誤りである事を認めてくれず、
最後には私を、
無視する態度を取るようになりました。

その態度をみて、

「この人に何を言っても無駄だ」

と思った私は、
こっそり課長に、
課長補佐の行おうとしている事を話し、
課長補佐を止めてくれるように頼みました。

課長も、
何も課長補佐から聞かされていなかったらしく、
私から聞いた話に驚き、

「卸元がやるなって言ってるんだから駄目だよ」

と言って課長補佐を止めてくれ、
事態は事なきを得ました。

けれど私は、
課長補佐が、
最後に私を無視した態度を取ったのが、
とても気になっていました。

このような態度は、
以前お局部下が私に取っていた態度と、
全く同じものだったからです。

その時も、私は相手の間違った行為に対して、
正論で対応し、
私が正しかった事も証明されたのですが、
その出来事に腹を立てたお局部下から、
無視されて、
私はそのストレスから、
カウンセリングに通う程に、
精神的に追い詰められたのでした。

「あの時と同じ苦しみを味わいたくない!」

そう思った私は、
発達障害専門カウンセラーが言っていた、

「相手のいう事を一度受け入れる」

という態度を、
実行してみることにしました。

なぜそんな事をしたかというと、
以前の発達障害専門カウンセリングの中で、

「人は相手が正しい事を言っていても、
最初から自分の意見を否定されると反発する」

と言っていたのを、思い出したからでした。

だから私は、課長補佐の今回の行動に対して、
まず、賛同してみる事にしました。

「課長補佐の、
あの商品を陳列するという考えは、
お客様も商品が買いやすくなるので、
とても良いものだと、私も思ってるんですよ」

私がこう課長補佐に話し出すと、
課長補佐は私の方を向き、
話を聞き出しました。

「ただ、あの商品は管理が本当に難しいので、
あの商品を担当しているW君に、
陳列して保管するのは無理だと思うんです」

W君というのは、
発達障害を疑われれている男の子で、
彼の仕事の要領の悪さは、
課長補佐も知っていました。

「私もこれ以上、彼のフォローは出来ないし、
商品を劣化させる訳にはいかないので、
残念ですが、陳列保管は諦めているんです」

私のこの言葉は、
ほぼ自分の思っている言葉で、
嘘ではなかったので、
心を苦しくする事無く、言う事が出来ました。

ただ、W君だけではなく、
あの商品を陳列して、
劣化させずに保管出来る人間は、
どんなに仕事が捌ける人間にもいないと、
思っている事は、
口には出しませんでした。

それでも課長補佐は、

「そっかぁ、
陳列保管は個人の能力が関係するのかぁ」

と言い、
自分の意見が、
全面的に否定されたのでは無い事に、
安心したのか、
自分なりに、
自分のプライドを守れる陳列出来ない理由を、
腑に落としたようでした。

私は課長補佐の辿り着いた結論には、
是とも非とも答えず、
ただ黙って困った顔を浮かべていました。

それ以降、気を取り直した課長補佐は、
私を無視する事はなく、
おかげで私も快適に働く事が出来ています。

発達障害グレーゾーンの私は、
正論を口にして、
相手の反感を買う事も多かったのですが、
お局部下に鍛えられたおかげで、
正論を伝えつつ、円滑な人間関係を築く術を、
少しずつ会得出来ているみたいです。