2次障害の防ぎ方

ASD(自閉スペクトラム症/旧アスペルガー症候群)がやりがちな相手を怒らす言動

私には4人の部下がいるのですが、
そのうちの1人が今、
家庭の事情で約1か月という、
長期の休暇を取っています。

やむを得ない為、
現在は休んでいる部下の仕事を、
私と残り2人の部下、計3人で手分けして、
日々何とか回しています。

本来ならば残りの部下は3人の為、
私と3人の部下の計4人で手分けすれば、
1人当たりの負担が減って楽なのですが、
現在、仕事を割り振っていないW君は、
自分1人の仕事だけでも毎日残業している為、
とても仕事を振り分けられないのです。

そんなW君は、
今年の春に転勤した以前の課長から、
発達障害だと疑われていた男の子です。

私自身も検査の結果
発達障害の範囲に入る人間だ、
と分ったのですが、
決められたことを勤勉に実行する、
自閉症スペクトラムの性質が功を奏して、
職場の人間関係は、
上手くいっていなかったものの、
仕事はきちんとこなしていた為、

「真面目で融通の利かない人間」

だとその課長から思われてはいましたが、
発達障害だと思われることは、
ありませんでした。

私も彼があまりに仕事が出来ない為、
自分がカウンセリングに通っている時に、
自分の担当のカウンセラーに相談して、

「恐らく発達障害であろう」

という言葉とともに、
彼への対応策などを一緒に考えてもらい、
それを実行していたのですが、
その対応法はどれも、
W君の拘りに合わせるという、
私の忍耐と努力を必要とする方法だった為、
忙しい時に実行するには、
少し辛いものでした。

どんなに私や周囲の人間が忙しくしていても、
W君は変わりません。
恐らくマイペースというのとは違い、
彼は同僚の1人が長期間休んでいる事で、
自分以外の周囲の人間の、
仕事が増えているという事実に、
気付く事が出来ないのだと思います。

そんな彼の事を分っていた私は、
彼に対して、
何を言うつもりもありませんでした。

けれど、10月の末日に、
毎月作っている本社への月末の報告を、
W君が間違えた数字で作成してきた時に、
私は少し苛立ってしまいました。

私はその日、
休んでいる部下の分の本社への報告と、
自分が作成しなければいけない本社への報告、
その2つを作成しなければならず、
お昼休みもまともに取れない状態でした。

だから、普段の私ならば、
W君が間違った書類を持ってきた時に、
私は何が違うのか説明していたのですが、
その日は、

「これ間違ってるから作り直して」

と言って、
書類の間違い箇所に赤で修正だけ入れて、
W君に返しました。

最初は素直に受け取ったW君だったのですが、
私が修正した数字の意味が、
自分で考えても分らなかったらしく、
私に質問してきました。

私は更に苛々してきました。
それは毎月末日に作成する、
ルーティンワークの報告で、
もうW君は2年半以上、
その報告書を作り続けていたからです。

「毎月作成しているでしょう!?」

休んでいる部下の分の仕事も、
こなしていた私は、
こんな決まりきった報告で質問してくる彼に、
苛ついて少し大きな声でそういいながら、
でもW君になぜそんな数字になるのか、
W君が見ていた社則を使って説明しました。

でも、それでもW君は納得しませんでした。
今まで数字が合っていたから、
分らなかったのですが、
彼は社則で決めているのとは違う、
間違ったやり方で報告を作成していたらしく、
私の指摘によって、
一度覚えたやり方を、
変更しなければいけない事に、
不満を覚えたようでした。

「なんでそんな事をしなくちゃいけないんですか?」

不服そうに言う彼に、
とうとう私の堪忍袋の緒が切れました。

私は今度ははっきりと、
声を荒げて言いました。

「社則でそうやって報告するようになってるから、
そうしなさいって言ってるだけで、
何で社則がそうなっているか私に聞いても、
分る訳ないでしょう!?」

こんな風に書くと、
私が仕事が出来ない彼に対して、
怒っているように思われるかもしれませんが、
本当のところは違いました。

私は彼が間違って覚えたやり方を通したいが為に、
不服を言ってきた事に腹が立ったのです。

発達障害グレーゾーンの私は、
恐らく職場の中で、
一番彼の思考が分るのではないか、と思います。

発達障害の中の自閉スペクトラム症(ASD)、
以前アスペルガー症候群と言われていた人間は、
こだわりが強く、変化を嫌う特性があります。

一度覚えた事を変えられる事に、
強いストレスを感じるのです。

それは自分も、
そのような人間だからよく分ります。

けれど、お金を払って、
教えを受けていた学生時代とは違い、
社会人は、
労働力を売って対価を得ているのだから、
自分の発達障害の性質上の拘りに、
付き合ってくれる人などいません。
(会社の役に立つような拘りは別です)

自分が会社に合わせなければならないのです。

会社員でそれが出来なければ、
多大に感じるストレスから、
2次障害を発症する事にもなりかねません。

私は自分がそうならないよう、

「最初に正しい方法を覚える」

といった行動を取る事で、
自分を守ってきました。

これは最初はとても時間のかかる方法です。
最初に根掘り葉掘り、
自分が納得いくまで調べるので、
仕事もとても遅くなるし、
適当にやっていた前任者の間違いに、
気づく事も多く、
周囲の人に嫌われもします。

それでも治す事の出来ない、
自分の特性を持って、
会社という組織で働いていく為には、
必要なことでした。

W君はそんな苦労は一切せず、
間違って仕事を覚えて、
それを覚えなおすのが嫌で、
不服を私に言ったのです。

私に答えようもない質問をぶつける事で。

この後、結局、
気持ちを落ち着けた私が詳しく説明する事で、
W君は自分の間違いに納得してくれましたが、
今回のように気持ちに余裕がなければ、
私もいつも、
彼に合わせてあげる事は出来ません。

W君は発達障害の検査を受けていませんが、
きっと私とは発達障害の傾向が違います。

だから私がやってきた方法が、
一概にW君に当てはまるわけではありません。

けれど会社員として働いているのであれば、
自分の特性を知って何とかするのは、
自分しかいないのです。

「自分を守れるのは自分しかいない」

周囲に理解を求めるよりもまず、
自分が自分の特性を知り状況に対処する事が、
自分を幸せにする近道だと思うのです。