発達障害(ASD)グレーゾーン

発達障害グレーゾーンは遺伝するのか?

私には成人した娘が1人います。
普段離れて暮らすその娘が、
週末に私の家に泊まりに来た時に、
発達障害の話になりました。

私は80歳を超えた自分の両親に対しては、
自分が発達障害グレーゾーンであることを
伝えてはいませんでしたが、
自分と同じような事で人間関係に悩んでいる、
この娘にだけは、
自分の検査結果を伝えていました。

私に配偶者はいない為、
私が自分の、
発達障害の事を話しても大丈夫だと、
リアルに顔を合わせる人間の中で、
思えた相手は、
この娘だけでした。

それでも、自分の親が発達障害などと、
言われて心地よい事はないかと思うので、
私は彼女がその話題に触れてこない限り、
極力その話題はしないように、
努めていたのですが、
昨晩は、娘の方からその話をしてきました。

何故そのような話を娘からしてくるのか、
不思議に思いながら聞いていたのですが、
娘は今年の2月から転職した新しい会社で、

「あなたの行動はおかしい」

と、他の社員の方から、
言われていた事が分りました。

何がおかしいと言われたのかを、
聞いてみると、

会社役員専用の部屋を、
使っていない時は使って良いと言われて、
本当に娘は休憩時間に、
その部屋で寝ていた事。

その部屋で寝ていた時に、
会社役員が入ってきた為、
部屋を出ようとしたが、
そのまま寝ていていいと言われ、
会社役員の方がその部屋を出て行った為、
娘はそのままその部屋で寝続けた事。

この二つの出来事を知った他の社員の方から、
娘はおかしい、と言われていたようでした。

「使っていいと言われていた部屋を使って、
寝ていていいと言われた部屋で寝ていて、
何でおかしいって言われるのかな?」

そんな風に言う娘をみながら、
私は発達障害専門カウンセリングでの、
カウンセラーと自分の会話を、
思い出していました。

私は人の言葉の裏を読む能力が不足していて、
相手の言葉をそのまま受け取ります。
けれど日本人は、
言葉に含みを持たせる人が多く、

「空気を読む」

という、発達障害者にとって高度な能力が、
当たり前に求められます。

それが出来ない私は、
学校や社会で疎まれる事が多かったのですが、
どうやら私の娘にも、
この能力は不足しているようでした。

「その部屋を使っていいという言葉や、
寝ていていいという言葉を、
相手の本心だと捉えない人が、
日本人は多いそうだよ」

私は発達障害専門カウンセリングで習った、
日本人は本心を言わない人が多い
という事実を、
娘に話して聞かせました。

娘は私がその話を聞いた時と同じように、
その事実に衝撃を受け、
そして私がカウンセラーから指導された、

「一度は相手の申し出を遠慮して辞退する」

という行為に対して、
私と同じように、
無駄な行為だと感じたようでした。

「思っていない言葉なら言わなければいいし、
どうせ受け取るなら、
最初から受け取ればいいじゃない」

そう反論する娘の言葉に私は同意しつつも、
社会で円満に生きていく為には、
そんな無駄だと思われる言動が必要らしい、
と話しました。

それから私は、
カウンセラーから言われて、
実行した方法のうち、
特に役に立ったと思う、
発達障害グレーゾーンが、
社会で円満に生きる方法を、
幾つか娘に教えてあげました。

そして娘と話しながら、
発達障害の原因は究明されていない、
と言われながらも、
親から子への遺伝はあるのではないか、
と感じました。

娘は私と違い、
人と一緒にいる事が苦ではありません。
むしろ一人でいる事が寂しいと言い、
いつも積極的に友人達と交流を持っています。

でも、
そんなに沢山の人間と付き合っている娘でも、
人の言葉の裏を読む事は苦手なのです。

そうなるとやはり、
”空気が読めない”という性質は、
人付き合いの経験値の不足だけでは、
説明がつきません。

「発達障害グレーゾーンは遺伝する」

あくまで私の家系の場合なのですが、
父、私、娘と、
発達障害グレーゾーンの性質は、
受け継がれているように思います。

そんな風に言ってしまうと、
今現在、
発達障害グレーゾーンで、
悩んでいる人の中には、

「遺伝だからしょうがないのだ」

と、幸せに生きる事を諦めてしまう人が、
ひょっとしたらいるかもしれません。

でも、少し待ってみて欲しいのです。

私の父は、
家族でも長時間一緒にいると疲れてしまう、
人の気持ちを理解出来ない、
傍若無人な人間で、
友人と呼べる人が殆どいません。

私は、母親から
「お前と話すのが一番楽しい」
と言われ、娘からも愛されていて、
僅かながらも友人と呼べる人がいます。

娘は、家族、親戚の皆んなから愛され、
友人も沢山います。

発達障害グレーゾーンの性質はあるものの、
世代が変わっていく度に少しずつ、
幸せに生きやすくなっていっているのです。

そこには多分、
発達障害グレーゾーンの性質だけではなく、
成育歴が大きく関係しています。

大人になってしまった私達は、
今更成育歴を変える事は出来ませんが、
その成長過程で発生させてしまった、

「認知の歪み」

を変える事は出来るのです。

私は友人に囲まれた、
幸せな娘の生活に憧れます。
娘も嫌われる人には徹底して嫌われるけれど、
自分の事を好きな人達に、
囲まれて生活する娘は、
私の理想の姿です。

そして、そんな理想の姿の娘は、
私と同じ発達障害グレーゾーンの性質を、
どうやら持っているのです。

私と娘の一番大きな違いは、
”自己肯定感の高さ”です。

娘は見ているこちらが心配になる位、
子どもの頃から、
根拠のない自信に満ち溢れていました。

娘ほどの自己肯定感を、
大人になった今から、
養うのは大変ではありますが、
娘の幸せそうな姿をみていると、
励みにもなります。

発達障害グレーゾーンも幸せになれる

大好きな人達に囲まれて、
幸せに生活している娘をみると、
発達障害グレーゾーンの性質は、
決して幸せに生きる事を、
妨害するものではないのだと、
そんな風に思えるのです。