心的外傷/トラウマ

苛められっ子の思考に気付いた時に

眩しい太陽の光

私が4月に転勤してきた職場のある建物は、
ダンボールや雑誌類、
ペットボトルや空缶といった、
資源ゴミと呼ばれるゴミを、
出す日と時間が決まっています。

その決まった日時になると、
担当のおじさんがゴミ置場の鍵を開けて、
搬入される資源ゴミの分別が、
キチンと出来ているかを確認されます。

ゴミの分別

ゴミを搬入する時間が、
会社の始業時間より前のため、
資源ゴミを出すには、いつもより早く、
出勤しなければならないのですが、
私の職場の人は、
誰も早く来て出そうとしなかったため、
私がいつも1人で早く出勤して、
ゴミ出しをしていました。

そんな私の姿を、
4月から見ていた担当のおじさんは、

「なんで係長のあなたが、
ゴミ捨てなんてしてるの?
部下の子たちは何してるの?
男の人だっているんでしょう?」

紙のゴミって重くって、
1回では運びきれないから、
私が何度も往復して運ぶ姿を見て、
そう言って怒ってくれていました。

私はおじさんから、
そんな言葉をかけられるたびに、
おじさんの自分への思いやりが、
心にしみこんで、
いつも泣きそうになっていました。

そう、その時の私は、
おじさんの自分への優しさが嬉しくて、
泣きたくなったんだと思っていたんです。

けれど。

今日、私が一人でゴミを捨てている横を、
私の職場の男の人が、
何食わぬ顔で素通りした時、
見かねたおじさんが、

「あなたもこの女の人ひとりに、
ゴミ捨てをさせないで、
早く来てゴミ出ししたらどうなんだ!!」

と怒って言ってくれた時に、
私はとっさに、
次のように思ってしまったのです。

「そんなこと言ったら、
私への風当たりがまた強くなるからやめて」

その男の人は、
以前何かと私にダメ出ししてきた人で、
今はその私を見下してきた態度が、
少し治まってきていたため、
私はその人との間で、
事を荒立てたくないと思っている自分に、
気が付いたのでした。

そして、こう思ったのです。

「これって苛められっ子の思考だなぁ」

って。

本当は、自分一人がゴミ出ししている現状が、
嫌で悲しいのに。

自分の立場が、
今以上に職場で辛くなるのが嫌だから、
自分に対して何かとダメ出ししてくる、
嫌な男の人に対してではなく、
自分を庇おうとしてくれてる、
おじさんの行動を止めようとするなんて。

そんな私の思考は、おかしい。

せっかく私の辛い現状を、
変えようと行動してくれたおじさんに対して、
私は自分の保身を考えて動くんじゃなくて、
ちゃんと感謝して、
そして自分の本当の気持ちに、
素直に行動しよう。

自分の本当の気持ち。

「私はあなたに苛められていい人間ではない」

そう思ったら、
私の心の中には力が湧いてきて、
私は顔を上にあげる事ができました。

「あ、眩しいな」

眩しい太陽の光

顔を挙げたら太陽の光が目に飛び込んできて、
ふいにそんなことを思いました。

私は自分が、
苛められっ子の思考を持っていた事に、
気付くまで、
自分の顔が下を向いていた事にさえ、
気付いていなかったのです。

私は自分を庇ってくれたおじさんに対して、
お礼を言うと、
一歩一歩踏みしめるようにして、
自分の職場に戻りました。

結局この男の人は、おじさんの言葉に立ち止まりはしたものの、無言でその場を去りました。

私の職場の朝礼の立ち位置は、
自分にダメ出ししてくる嫌な男の人の隣。
いつもなら顔色を伺って、
ビクビクとしてしまう、
自分の心を鼓舞するように、
私はしっかりと顔をあげたまま、
少しだけ胸を張るようにして立ちました。

「あなたが怒られたことに対して、
私に何も非なんかないんだから、
私はあなたの気分なんか気にせずに、
堂々としているわよ」

そう相手に対してアピールできるように。

そんな私の態度が、
功を奏したのかはわかりませんが、
その後、特にその男の人から、
不快な態度を取られることは、
ありませんでした。

自信を持った女性

繰り返し、
自分に向けられる言葉って恐ろしい。

影響を受けないように気を付けていても、
すっかり潜在意識に刷り込まれて、
自分で気付かないうちに影響を受けてしまう。

私の中に、
知らないうちに生まれてしまっていた、
苛められっ子思考。

そのことに気付かせてくれた、
優しいおじさんに、
心から感謝しました。