発達障害(ASD)グレーゾーン

発達障害と思われる人と思われない人との違い

私は検査を受けたら、
発達障害と診断される人間です。

ですが、私は、
職場で頑固者と思われることはあっても、
発達障害だと思われたことはありません。

逆に、私の部下の男の子は、
発達障害の検査を受けていませんが、
以前いた上司から、
発達障害だと思われていました。

彼と私の違いは恐らく、
本当に紙一重だと思います。

そんな風に思っている私は、
他の人達に比べて、
彼に対してかなり寛容だと思うのですが、
それでも昨日はとても、
腹が立つことがありました。

それは昨日の午後、
突然彼が洩らした一言から始まりました。

「仕事がとても明日の納期までに終わらない」

その言葉を聞いて、
私はぎょっとしました。
それは、期限を延ばせる類の仕事では、
なかったからです。

納期に遅れたら困るので、
彼の上司である私は彼に対して、

「間に合わない仕事、私がやるから貸して」

と言いました。

彼のその言葉を、
私が聞いたのは午後4時前で、
その時間からその仕事に取りかかったら、
確実に残業になるコースでした。

正直なところ、
残業はあまりしたくありませんでしたが、
彼の仕事が間に合わなかったら、
私の責任にもなる為、
私は泣く泣くサポートを申し出たのでした。

それを、あろうことか…
彼は断りました。

予想外の出来事に、
私は驚きを隠せませんでした。

間に合わないと言っているのに、
彼はどうする気なのだろう?

一瞬とても慌てたのですが、
私はすぐに彼の意図に気付きました。

彼は決して、
手伝いを拒否している訳では、
ありませんでした。
なぜなら彼は、私にこう言ったからです。

「いえ、その仕事、自分でやります」

(あぁ、そういうことか…)

彼の意図を汲み取った私は、次に

「じゃあ、今やっている仕事を私に貸して」

と彼に申し出ると、
今度はすんなりOKされました。

私は彼のこの対応が、
かなり面白くありませんでした。

どちらも同じような仕事でしたが、
私が彼に最初に貸してと言った仕事の方が、
若干業務量が軽めで、
彼が私に渡した方が、
大変な仕事だったからです。

きっと彼は、
そんな事まで考えて話してはいないでしょう。
彼の頭の中では、
業務の大変さなど考慮せず、
ただ単に、

「自分がやりたいと思ったものを主張した」

だけのことだったのだろうと思います。

発達障害グレーゾーンである私は、
発達障害と思われる彼の思考の軌跡が、
なんとなく分ります。

だから、
そこは少し嫌な気持ちがしたものの、
彼の希望通り大変な方の仕事を、
私は引き受けました。

予想通り、
私が引き受けた仕事は時間がかかり、
夜の10時を過ぎても、
終わる目処が立ちませんでした。

それでも納期日は次の日の午前中で、
終わらせるまでは、
帰ることが出来なかった為、
私が疲れと戦いながら、
気力を振り絞って仕事をしていると…
目の端に、動き回る彼の姿が映りました。

何だか帰り支度まで始めているような、
彼の姿をみて、
私は思わず彼に対して、

「今、何してるの?!」

と、語気を荒げて聞いてしまいました。

相変わらず彼は悪びれず、

「今、本社への報告メールを送ってました」

と言ってきました。

それは私が、
今日の営業時間中に本社へ送るように、
彼に指示していたメールでした。

言ったことを、
ちゃんとやっていない事にも、
腹が立ちましたが、
案の定、
彼が自分でやると言った仕事の方が簡単で、
大変な方の仕事を受け持った私より、
先に仕事が終わっていても、
彼の仕事をまだ黙々とし続けている私に、
声もかけないで、
いつでも出来るような、
別な仕事を始めた彼に、
心底腹が立ちました。

自分の仕事で他人が残業している事に対して何の感情も持たない人。

この自分本意な思いやりのなさが、
彼が発達障害だと思われる理由の1つでした。

私も、人の気持ちを推し量る能力は、
一般の人に比べて低いという結果が、
田中ビネー知能検査で出ています。

でも19歳で子供を産み、
20歳でシングルマザーになった私には、
その能力の低さをカバー出来るだけの、
人生経験がありました。


対して彼は、独身で、
ずっと家の中でゲームばかりしていて、
対人関係に関する能力の低さを補えるような、
外に向かう行動を、
今までずっとしてこなかった為に、
人に対する思いやりの気持ちが、
育ってきてはいませんでした。


1人で子供を育てて苦労した私と、
好きな事をずっとしてきた彼。

どちらが幸せなのかは、
その人の判断に、
委ねられるところだと思いますが、
私は苦労して、
色んな人の親切や、嫌がらせを、
受けてきて良かったと思いました。

人の感情のストックが、
溜まってくればくる程、
私は相手の感情を推し量るのではなく、
過去の経験に基づいて、
推測する事が出来ます。
相手の気持ちに共感は出来ないけれど、
相手が欲している行動を予測して、
その通りに振る舞うことは出来ます。

これが、発達障害だと疑われる彼と、
発達障害グレーゾーンでありながら、
発達障害だと思われない私の、
大きな違いの一つなのだと思います。