私の部下の1人が、業務時間終了後、
帰ろうとしていた私に、
書類の書き方を質問してきました。
部下は簡単に考えているようでしたが、
それは法律に絡む内容で、
その文書は弁護士に返送するものだったため、
私は自分の意見を伝えた上で、
書き方については弁護士に確認した方がよい、
と答えました。
その部下は単に、
自分の考えたとおりの書類を作りたくて、
私にそれでいい、
と言ってもらいたかっただけだった為、
私が部下の考えに異を唱えたことが、
気に入らなかったようで、
私にそんな意見は求めていなかったといい、
自分の考えの正しさを主張し始めました。
私は部下の主張をひと通り聴き終えた後、
部下に対してこう言いました。
「あなたは私に、
正しい書類の書き方を尋ねてきましたが、
私はその書類の書き方を知りません。
書き方が分からない、
あなたと私が話し合っても、
結局、正しい書類の書き方は分からないので、
弁護士に対し間違えた書類を送って、
うちの会社に不利益を与えないためにも、
正しい書類の作成の仕方は、
弁護士に確認した方がよいと思います」
私がこの台詞の中の、
書類の書き方を知りませんと言った時に、
部下は皮肉な笑いを口元に浮かべ、
弁護士に確認した方がよいと言った時に、
鼻で私を笑いました。
それはとても人を小馬鹿にした、
腹が立つような笑い方でした。
その笑いを浮かべた後、
その部下は私に向けていた体を、
90度回転させると、
「明日、九州本部の担当者に確認します」
と言い捨てて、
この話は終わりとばかりに、
別な仕事を始めました。
物凄く大きな音をバンバンと立てて、
自分の怒りを表現しながら。
私はそんな部下の言動に、
かなり不愉快な気持ちに陥ったのですが、
しばらくその不愉快さを感じて、
自分の気持ちを落ち着けると、
ここ最近、
定型発達者を観察していて発見した、
感情を引きずらないというスキルを、
発動させてみることにしました。
私は気を取り直して、
その部下に何事も無かったかのように、
話しかけました。
「その弁護士への報告を今日中にするのなら、
私は残って点検した方がいいよね?」
すると部下は、
まだ怒りを引きずっていたのか、
強い口調でこう答えました。
「いえ、係長(私のこと)の点検は、
明日でいいので帰って結構です!」
部下のピシャリとした物言いに、
敵意を感じた私はさらに、
不快な気分を味わったのですが、
帰っていいというのだから、
仕事を抱えた部下の心配など辞めて帰ろうと、
そのまま帰り支度を始め、
自分の席を立ちました。
すると、そんな私に対し部下が、
「あの、ここのところなんですけど…」
と、さっきの怒り口調とは打って変わって、
なんだかしおらしい口調で、
私に対しもう一度、
先ほどの弁護士に返送する書類を持ってきました。
何回来られても、
私の意見は変わらないのですが、
私が彼女に理解しやすいような例を出して、
彼女が理解しやすい言葉を使って、
話したことと、
今回部下は、
私の意見を聞く態度で話しに臨んできたため、
ようやく私の言っている内容を理解し、
自分が作成しようとしていた書類の問題点を、
把握してくれました。
そして何故、
私が弁護士に確認した方がよいと言ったか、
納得した部下の私への態度は軟化し、
弁護士にまつわる雑談を話し始めたため、
私は帰るために抱えた自分の鞄を置いて、
部下の話しに付き合いました。
苛立っていた部下の心を、
普通の状態にまで落ち着けるために。
そのために費やした時間は、
30分以上に及んだのですが、
色々話して落ち着いた部下は、
さっさと自分の荷物をまとめると、
「お先に失礼します」
と言って、
私より先に帰っていってしまいました。
私は、そんな部下の姿を見て、
かなり唖然としてしまいました。
帰ろうとしていた私を引き止めて、
散々自分の話に付き合わせておきながら、
先に帰っていった部下の、
あまりに失礼な態度に呆れてしまって。
気持ちの切り替えが苦手なASD(自閉スペクトラム症)、
空気が読めないアスペルガー症候群、
などと言われるけれど、
定型発達者の部下の今日の夕方の態度の方が、
よっぽど気持ちの切り替えが下手で、
空気が読めていないのではないだろうか?
人間関係のスキルを学んでいるアスペルガーは、
何も考えていない定型発達者より気遣いが出来る。
そんなことを思った、今日の出来事でした。