発達障害(ASD)グレーゾーン

定型発達者を真似てみた2

怒って働く女性

私の部下の1人が、業務時間終了後、
帰ろうとしていた私に、
書類の書き方を質問してきました。

部下は簡単に考えているようでしたが、
それは法律に絡む内容で、
その文書は弁護士に返送するものだったため、
私は自分の意見を伝えた上で、
書き方については弁護士に確認した方がよい、
と答えました。

その部下は単に、
自分の考えたとおりの書類を作りたくて、
私にそれでいい、
と言ってもらいたかっただけだった為、
私が部下の考えに異を唱えたことが、
気に入らなかったようで、
私にそんな意見は求めていなかったといい、
自分の考えの正しさを主張し始めました。

私は部下の主張をひと通り聴き終えた後、
部下に対してこう言いました。

「あなたは私に、
正しい書類の書き方を尋ねてきましたが、
私はその書類の書き方を知りません。
書き方が分からない、
あなたと私が話し合っても、
結局、正しい書類の書き方は分からないので、
弁護士に対し間違えた書類を送って、
うちの会社に不利益を与えないためにも、
正しい書類の作成の仕方は、
弁護士に確認した方がよいと思います」

私がこの台詞の中の、
書類の書き方を知りませんと言った時に、
部下は皮肉な笑いを口元に浮かべ、
弁護士に確認した方がよいと言った時に、
鼻で私を笑いました。

それはとても人を小馬鹿にした、
腹が立つような笑い方でした。

その笑いを浮かべた後、
その部下は私に向けていた体を、
90度回転させると、

「明日、九州本部の担当者に確認します」

と言い捨てて、
この話は終わりとばかりに、
別な仕事を始めました。

物凄く大きな音をバンバンと立てて、
自分の怒りを表現しながら。

私はそんな部下の言動に、
かなり不愉快な気持ちに陥ったのですが、
しばらくその不愉快さを感じて、
自分の気持ちを落ち着けると、
ここ最近、
定型発達者を観察していて発見した、
感情を引きずらないというスキルを、
発動させてみることにしました。

私は気を取り直して、
その部下に何事も無かったかのように、
話しかけました。

「その弁護士への報告を今日中にするのなら、
私は残って点検した方がいいよね?」

すると部下は、
まだ怒りを引きずっていたのか、
強い口調でこう答えました。

「いえ、係長(私のこと)の点検は、
明日でいいので帰って結構です!」

部下のピシャリとした物言いに、
敵意を感じた私はさらに、
不快な気分を味わったのですが、
帰っていいというのだから、
仕事を抱えた部下の心配など辞めて帰ろうと、
そのまま帰り支度を始め、
自分の席を立ちました。

すると、そんな私に対し部下が、

「あの、ここのところなんですけど…」

と、さっきの怒り口調とは打って変わって、
なんだかしおらしい口調で、
私に対しもう一度、
先ほどの弁護士に返送する書類を持ってきました。

何回来られても、
私の意見は変わらないのですが、
私が彼女に理解しやすいような例を出して、
彼女が理解しやすい言葉を使って、
話したことと、
今回部下は、
私の意見を聞く態度で話しに臨んできたため、
ようやく私の言っている内容を理解し、
自分が作成しようとしていた書類の問題点を、
把握してくれました。

そして何故、
私が弁護士に確認した方がよいと言ったか、
納得した部下の私への態度は軟化し、
弁護士にまつわる雑談を話し始めたため、
私は帰るために抱えた自分の鞄を置いて、
部下の話しに付き合いました。

苛立っていた部下の心を、
普通の状態にまで落ち着けるために。

そのために費やした時間は、
30分以上に及んだのですが、
色々話して落ち着いた部下は、
さっさと自分の荷物をまとめると、

「お先に失礼します」

と言って、
私より先に帰っていってしまいました。

私は、そんな部下の姿を見て、
かなり唖然としてしまいました。

帰ろうとしていた私を引き止めて、
散々自分の話に付き合わせておきながら、
先に帰っていった部下の、
あまりに失礼な態度に呆れてしまって。

気持ちの切り替えが苦手なASD(自閉スペクトラム症)、
空気が読めないアスペルガー症候群、
などと言われるけれど、
定型発達者の部下の今日の夕方の態度の方が、
よっぽど気持ちの切り替えが下手で、
空気が読めていないのではないだろうか?

人間関係のスキルを学んでいるアスペルガーは、
何も考えていない定型発達者より気遣いが出来る。

そんなことを思った、今日の出来事でした。